2020年実績を22.3%上回る
「持家」全体の伸び率超える平屋住宅
本紙2021年11月16日号で報じた平屋住宅の北海道の実績について、最新(2021年1~12月)の着工データを調べてみた。調べるにあたっては、一般的な「平屋住宅」を想定しているので、分類としては1階建て住宅の中の大半を占める「居住専用住宅」の「木造」の国土交通省のデータから計算した。
国土交通省のデータによると、北海道内の「居住専用住宅木造」のここ3年間の着工推移は、2018年が1666棟、19年が1809棟、20年が1769棟と、18年から19年が8.8%増だったが、20年には2.2%減と減少している。
ところが、21年の1~12月の実績を見てみると、2163棟と20年(1~12月)実績を394棟上回った。伸び率も20年実績に対して22.3%増という状況だ(グラフ①)。これは全道の持家の20年1~12月の着工数の前年に対する伸び率が8.3%増に対し、14%以上も上回っている。
そこで、全道の着工数の多くを占める札幌市の「居住専用住宅木造」の直近3年間の着工推移を見てみると、18年が142棟、19年が166棟、20年が169棟と、北海道同様に18年から19年にかけて16.9%増と大きく増加している。ただ、19年から20年にかけては全道が2.2%減少しているのに対し、1.8%増と微増ではあるが増加している(グラフ②)。そして、21年は201棟という結果で、20年に対し18.9%増と全道には及ばないが、20%近い伸びを示した(グラフ②)。
幅広い層にメリットある「平屋住宅」 建築費などコスト高がデメリット
しかし、市場を見渡してみて、「平屋住宅」が全道で2000棟も新築で建設されているような感覚はあまりない。実際、道内のハウスビルダーなどに取材しても、「平屋の実績はゼロ」、もしくは「ほとんど建てていない」という回答がほとんどだった。
ところが、取材を進めてみると、北海道の戸建住宅といえば「木造2階建て」のイメージが強いが、現実の市場では分譲マンションの感覚で「平屋のニーズは意外とある」という。ただ、特に札幌などの場合、土地が狭く30坪程度の敷地では、建蔽率の関係で2階建てにしなければ建物の面積を取れないことや、仮に面積が確保できたとしても、基礎や屋根の面積が2倍になること、延べ床面積が同じでも2階建てよりも高くなってしまうことから、営業マンなども端から2階建てを勧める傾向が強いという。
ではなぜ、ここまで平屋住宅が増えているのだろうか。
そこで、「平屋住宅」を商品化しているハウスメーカーを調べてみると、主に本州系のメーカーが平屋住宅を商品化、または販売強化していることが分かった。その数は数社ほどではあるが、あるメーカーなどは他社の数倍も多く着工しており、平屋市場の大半を占めていた。
平屋住宅のメリットは、「1階⇔2階の上下移動ないので生活動線が効率的で楽」「2階建てよりも天井高を高くとれるので開放感がある」「2階建てと比べてメンテナンス費用を抑えられる」など、子育て世帯からリタイヤ組まで、幅広い層で受け入れられる要素がある。
全体の着工数に比べれば、まだまだその数は小さいものの、「平屋」ニーズがあり、その層を着実に掴んでいこうとしているメーカーも存在していた。北海道では木造2階建てが住宅のイメージかもしれないが、本州方面ではむしろ平屋が住宅の基本だという。実際、「九州方面では平屋住宅の売れ行きがいい」という話もあった。
中古を含めた分譲マンションの高騰により、今後は北海道でも「平屋住宅」が注目されるかもしれない。
(第1068号 2月1日発行 1面より)
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