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新春特集 会社を継いだ経営者に聞く③


 戦後80年を迎え、道内の住宅不動産業界は、成長から成熟のフェーズに入っている。現在は高度成長期を支えた創業世代から、2代目や3代目の社長による経営が増加。先代の教えを受け継ぎつつ、新しい時代のニーズを捉えようと各社とも奮闘している。親族内で承継をした4社の経営者に現状や将来への思いを聞いた。


竹内建設 竹内哲也社長



次世代を担う人材の成長が会社の未来を照らす


―受け継いだものは。

 従業員とお客様を守るため、会社を絶対につぶしてはならない、それが私の信念だ。当社は毎年初めに「瓦版」と称するオーナー向けの新聞を発行し、「お客様と一生涯のお付き合い」を形として伝えている。年賀状は受け取れない場合があるため、その代わりに「ごあいさつ」として配布。オーナーか否かは問わず、拠点を置く東月寒中学校区内の約7000世帯にも届けている。

 北海道胆振東部地震を経験し、住宅は「命と安全を守る器」であることを改めて痛感した。工務店としての存在意義を果たし続けるためにも、会社の存続は何よりも大切だと考えている。父から会社を継いで10年たってやっと最低限のことが分かった感じがしている。


―今後新たに取り組みたいこと

 10年、20年先を見据え、「住まいの本質」を追求した商品ラインアップの構築を進めている。市場単価が高騰し、地域のお客様から「竹内建設の家は高くて手が届かない」と言われてしまっては工務店としての役割を果たせない。一定の性能基準を保ちながら、2050年まで性能が劣化しない住宅を提供し、暮らしの価値を長期にわたって支えたいと考えている。


―将来設計について

 創業時の理念は「家づくりを通して一生涯のお付き合い」。しかし、事業拡大により不動産や非住宅も手がけるようになった現在は、「暮らしにきらめきを」を新たなビジョンとして掲げている。

 今後も地域密着を軸に、住宅産業としての価値を守りながら、お客様と長く信頼関係を築ける方法を模索する。

 時代の変化は激しく明確な長期目標を打ち出すのは難しい。2019年から22年までは順調に進んできたものの、その後の情勢変化を受け、24年初めから戦略の再構築に着手した。25年初頭には新たな方向性を示し、5年をかけて事業基盤の強化を進める計画だ。


―課題と解決策

 当社の強みは「家が好きなスタッフ」の存在だ。その情熱を活かし「家好きなお客様と楽しく家づくりをする」という姿勢は、これからも大切にしたい。ただし、従来のやり方を続けるだけでは利益を確保するのが難しい時代だ。鍵を握るのは若手スタッフの成長だと考えている。ここ数年で採用した若手が、3年、5年後に力をつければ、会社は大きく変わるはずだ。

 人材育成については、前職の飲食業界で学んだ「育成に終わりはない」という意識を大切にしている。当社でも育てる側が人材の入れ替わりも含む長期的な育成という視点を持つことの重要性を痛感しているためだ。

 今は方針に合った組織づくりに注力し、私自身が社員と直接関わる機会を増やしている。次世代を担う人材が成長すれば、会社の未来もさらに明るくなると信じている。




(たけうち てつや) 1974年札幌生まれ。97年3月北海学園大工学部を卒業後大手飲食チェーンを経て07年6月に竹内建設入社。15年4月から現職。



(第1127号 第1部 1月1日発行 2面より)

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