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想いを叶える親愛信託 64 

第64回「跡継ぎは誰にする?」



得意・優れている人が能力を活用できるように


 財産がある人もそれほどない人も、誰にその財産を継がせるのか?という問題があると思います。自分の亡くなる日が分かっていれば計画も立てやすいのですが、こればかりは誰にも分かりません。自分で会社を経営している場合や資産管理法人を持っている場合は、会社を誰に継がせるか?いわゆる事業承継であり、株を誰に継がせるかということになります。それから所有不動産がある場合には自宅や収益物件などプラスの財産だけでなく、借入などマイナスの財産があることもあります。プラスの財産は親愛信託で、マイナスの財産は遺言で備えることになります。


 同じ両親から生まれて、同じように育てられても得て不得手がそれぞれ違う。長男だから経営能力があるわけでもなく、社会的情報量が多いわけでもない。それなのに生まれた順番が早いからと言って財産を引き継がせるのは、逆に財産をもらった人も周りもが不幸になるケースがあります。多様性の時代、男女関係なく、生まれた順序など関係なく、得意な人や優れている人がその能力を最大限に活用できるようにするべきだと思います。


子が身体的に財産を持つことが難しい


 先日、相談を受けたケースです。不動産を持っているAさんには子どもが一人しかいない。Aさんの子をBさんとします。Bさんも子が一人しかいません。Aさんの孫をCさんとします。Bさんはずっと専業主婦で、体も弱く足腰が不自由なため財産を持っても管理するのが物理的に難しく、本人も望んでいません。Aさんの不動産を相続でBさんが引き継いでも、Bさんは所有者としての役割を果たすのは難しそうです。しかし、AさんはBさんの生活は守ってあげたいと思っています。


 Bさんのように育て方や環境とは関係なく、生まれつき病弱だったり、途中で病気になることもけがをして体身体が不自由になることもあります。子がそのように身体的に財産を持つことが難しい場合に跡継ぎ問題は深刻です。


 Aさんの場合、遺言を書いてCさんに財産を遺贈することもできますが、Aさんの財産に相続税がかかる場合には、CはAの相続人ではないので2割加算になりますし、Bさんの生活を守りたいというAさんの望みはかなえられません。CさんはじぶんがAさんの財産を管理して、親であるBさんの生活を守っていくことに賛成です。しかし、多額の相続税を払うことはしたくないし、自分だけが財産を持つことに対しても抵抗があります。


得意な人が財産を管理利益は自分が守りたい人に


 親族の中に財産管理が得意な人がいてもその人が財産を承継する人とは限りません。万が一、財産を継ぐ本人が自分ではなく得意な人に継がせてほしいと望んだとしても周りがそれを許さないケースもあります。今回の相談者は子も孫も一人なので、周りの意見を気にする必要はありませんが、子が複数、孫も複数いて、それぞれに配偶者がいるような場合はそれぞれの意見もあり、最終的には、向いてなくても本人が望んでなくても「長男が継ぐ」ことが一番もめない選択になることが多いです。


 しかし、長男にその能力がなければ結局、親族みんなが不幸になることになります。そのようなときに親愛信託を活用します。今回の相談者のケースですとAさんが委託者となり、Cさんを受託者とし、信託契約を締結します。当初受益者はAさんで、二次受益者はBさん、三次受益者はCさんです。信託契約締結後はCさんが不動産を管理、運用し、必要であれば処分してAさんのために受託者としての義務を実行します。Aさんが亡くなったあとの二次受益者をBさんにしておき、Aさん亡き後も信託されている不動産を管理、運用、処分して、受益者であるBさんのために受託者としての義務を果たします。


 このように得意な人が財産を管理し、その利益は親族または自分の守りたい人が受けることができます。管理する人と利益を得る人を分けられる親愛信託を使い、スムーズに財産承継や事業承継を行うことができるのです。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1118号 2024年7月16日 より 引用)







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