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想いを叶える親愛信託 61

第61回「空き家対策と親愛信託」



空き家が発生する理由、メカニズムとは


 空き家になる理由はさまざまあると思いますが、どのような理由にしても計画的に不動産を所有しなかった結果ではないでしょうか?高齢者の一人暮らしで、所有者の方が施設に入ってしまった…そして判断能力がなくなってしまうと賃貸や売却するためには後見人を付ける必要がありますが、よほど価値のある不動産でなければそこまでしないでしょうし、価値があっても売却できないケースもあります。


 亡くなってしまうと相続人が賃貸や売却することができます。しかし、亡くなるまでは高齢な所有者が契約しないといけません。たとえ、使いたい人や買いたい人がいても契約ができないため、そのまま空き家になってしまいます。売却するためには亡くなるのを待つという本望ではないことになってしまいます。


 所有者が高齢になると認知症のリスクは高くなってきます。そのため早めに売却して金銭に変え、自分が生きている間に金銭を使いたいという考えもあります。しかし、自宅を売却してしまうと自分が住む所を借りないといけなくなります。そのタイミングで高齢者施設に入居する場合でなければ賃貸住宅を探さないといけません。ただ、高齢になると賃貸の条件も厳しくなり、それも難しくなってきます。そのため亡くなるまで住むという選択肢になり、認知症になってしまうと自宅がそのままになってしまうのです。


 もし、高齢者にすぐに貸してくれる物件があったとしても、やはりみなさん最後まで自分の家で過ごしたいという方が多いと思います。そのために親愛信託を活用して万が一自分が認知症になっても自宅を賃貸したり売却したりできるようにしておくのです。何も対策をせず、遺言もなく、自宅について家族と何も話をしていないと、残された人は亡くなった人が自宅をどうしたかったのか分からないので、誰も住まないのに「三回忌まではこのままにしておこう」とか「売ってしまうと寂しがるかもしれないのでしばらくこのままにしておこう」ということで、何か月かに一度、空気の入れ替えに行きながら自宅を所有し続けます。


所有者が責任を持って不動産の最後を計画する


 価値の高い不動産であれば、固定資産税も高いですし、売却して欲しいという人もいるので、そのまま空き家にならず有効的に使うことができると思いますが、そうでなければしばらくはそのままにしておこう…とするとだんだん老朽化が進んで空き家のままになってしまい、最後は建物を壊して更地にしようとなり、結局費用ばかり掛かることになりかねません。


 そうならないためにも不動産を持っている人は「自分がいなくなったらこうして欲しい」ということをしっかり伝えて、それが実現できるように親愛信託契約を締結しておくのです。信託を活用すると費用が高いからとか、お金が掛かるからやめておこうという意見を聞きますが、総合的に考えると結局、掛かる費用は変わらなかったり、親愛信託を活用しない方が費用は掛かるし、入ってくるお金も入ってこなかったりするのです。


 信託は認知症対策と思われていますが、それだけではなく空き家対策にもなります。もっと行政や周囲の人の協力を得て積極的に活用されるべきだと思います。空き家になる不動産のほとんどがそれほど価値がないか、費用が掛かるためどうしようもならなくなっているものです。そのため必要とする人がいないので、放置されてしまい空き家のままになってしまうのです。


 所有者が責任を持って、自分と不動産の最後を計画的に対策しておくことが大切です。自分が亡くなったらすぐに売却してほしいという意思を伝えて、それが実行できるように子供や信頼できる人に自分の不動産を託し、自分の想いが実現できるように親愛信託を活用します。そうすると残された人も「三回忌までおいておかなければ」とは考えなくて済みます。自分が所有していた自宅や不動産が空き家になって、みんなの厄介者にならないように親愛信託を活用し将来に備えておくことをお勧めします。顧客や周囲の方にも是非お勧めしていただきたいと思います。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1113号 2024年4月16日 より 引用)







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