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想いを叶える親愛信託 58 

第58回「再婚のための親愛信託」



再婚という身分行為と財産を分けて悩み解決


 「過去に大切な人を亡くしてしまった」「大切な人だったけれどすれ違いや価値観の違いで離れてしまった」「子供もいるし、新たな配偶者を迎えることはないと思っていたけれど…人生は何が起こるかわからない。運命の人と出会ってしまった」というようなこともあると思います。


 「本人同士は結婚したい…けれども子供たちが反対している」もしくは「子供たちのことを考えると再婚はしない方がいいと思う」というような方が少なからずいると思います。再婚を反対する理由や再婚は避けたいと思う理由はさまざまでしょうが、再婚するという行為自体に反対意見があったり、自分の感情がそうであるのであれば「再婚しない」という選択をするほかにないと思います。


 しかし、多くは再婚という行為ではなく、「相続が面倒になる」、本音を言えば「相続財産が配偶者に相続される」ことに対する反対や戸惑いが多いのではないでしょうか?実際に相談を受けるケースも「再婚はしてもいいけれど相続関係が複雑になるのが嫌」という意見が多いです。つまりは「相続財産に対して複雑になるのが嫌、取り分が減るのが嫌…」という事です。実子にとっては自分たちの権利を守りたいから再婚するのは反対という事なのでしょう。


 では再婚という身分行為と財産を分けたらその悩みは解決できるのではないか?と思いますよね。その通りです。ご本人が亡くなった時の財産の行く先はきちんと決めておいて、そして、再婚するようにすればよいのです。そうすると財産目当てで再婚する人にとっては、再婚する意味がなくなりますので、「あの人は財産目当てで再婚するのでは?」という疑いをかけられることもなくなります。


いろいろな対策が親愛信託で可能に


 再婚するタイミングにもよると思いますが、長く連れ添って本当の家族の様になれば、財産を分ける仲間に入れてあげればよいのです。具体的にはご本人の財産のうち、年金など生活費に使うもの以外の主な財産を信託財産として、子の一人を受託者とする信託契約を締結します。当初の受益者はご本人にしておき、二次受益者を配偶者以外の子供たちにします。そうするとご本人が亡くなった後、信託財産になっている財産については子供たちが信託受益権として引き継ぐことになります。そこに配偶者は出てきません。遺留分の問題は残りますが、配偶者に争う意思がなければ遺留分の問題は出てきませんし、もしその可能性が少しでもあるのであれば親愛信託を活用して、遺留分対策をしておけばよいと思います。


 ご本人が所有権で持つ財産と信託にする財産の決め方は、ご本人と配偶者の生活にかかる費用は当然必要なので、その部分は信託財産にしない、もしくは当初の受益者はご本人なので、受益者が持っている受益債権を行使し、金銭を享受して生活費とするという方法を取ります。


 自宅を信託財産にしたからご夫婦が住めなくなるわけではありません。ご本人が亡くなった後の財産の行く先が配偶者ではなく、二次受益者になるというだけの話です。配偶者が住めなくなるのを避けるために配偶者居住権を登記しておいて、信託財産にするという方法もあります。


 再婚対策の場合は、配偶者に渡したくない財産は信託財産としておき、生活に必要な財産は配偶者に残せるように所有権のままご本人が管理するという方法が実務的には管理しやすいと思います。そして、結婚生活が長くなり、子供たちも納得すれば二次受益者に配偶者を加えます。受益権を承継する人物と割合は自由に決められ、当初の受益者が存命な間は二次受益者の変更は契約の変更になるので、課税が生じることなく、受益者もしくは受益者代理人と受託者で変更できるような信託契約の内容にしておきます。


 受益者代理人を設定しておくことで、受益者が契約行為のできない状況になっても、信託契約の変更が可能となります。身分行為と財産を分けることで再婚したいという思いを叶えることができるのです。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1107号 2024年1月1日 より 引用)







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