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想いを叶える親愛信託 29

更新日:2023年2月16日

第29回「相続対策と相続税対策」




承継対策も税金対策も最善の形にしておく


 相続対策と相続税対策は分けて考える必要があります。ただ、財産が所有権のままですと相続対策と相続税対策は同時に考えなければなりません。相続税対策で、財産の部分だけを動かしたくても所有権のままだと渡した人の自由になってしまうので、自分の意思は反映されなくなります。

 税金のことだけを考えて財産を分けてしまうと自分の会社の株や不動産が共有になったり、複数の人が持つことになったりしてしまいます。承継のことも税金のことも将来困らないように最善の形にしておくことが大切です。


 相続対策は、相続になった時にもめずに手続きがスムーズに行えるよう対策しておかないといけません。相続人の中にすでに判断能力のない人がいたり、行方不明の人がいたり、何十年も連絡を取ってない人がいるような場合に何もしないでいて相続になると時間も費用もたくさんかかることになります。


 そもそも何十年も連絡を取っていない相続人にわざわざ知らせる必要がない場合もあると思います。相続対策として最低限遺言を書いておく必要がありますが、遺言を書いていても相続人全員に亡くなったことと遺言の内容を知らせなければいけません。

 親愛信託を活用して信託財産にしておけば、受益権を持っている人が亡くなったことがわかる書類があれば、契約時または宣言時に決めておいた人に受益権が承継されます。手続きは簡単です。相続人に知らせる必要もありません。


 日頃から家族や親族として関わりを持っていれば、亡くなったことを知らないなんてことにはなりません。財産を持っている人が「自分にもしものことがあったら疎遠になっている子供や親族に知らせて欲しい」という希望をもっていれば知らせるべきですが、本来は亡くなってから知らせるのではなく生きているうちに本人が財産をどうしたいのかを知らせてきちんと気持ちを伝えるべきだと思います。


本人の意思を大切にし 将来の相続に備えて対策


 相続でもめるのは当事者がいなくなってから手続きをしようとするからであって、財産を持っている本人が元気な時に行き先を決めてみんなに伝えておくべきだと思います。そこから反省して親孝行をする人もいると思います。ご本人の意思を大切にし、将来の相続に備えて対策をすることが大切です。


 そして、相続税対策はご自身が持っている財産を減らしていけば相続税は少なくなります。所有財産を使ってしまうか、誰かに渡すか、借金を増やせば全体的な財産は減り相続税は少なくなります。ただ、無駄遣いをしては意味がないので、自分や自分の大切な人のために有効的に使ったり渡したりすることが大切です。


 相続税対策のために財産を渡す場合に所有権のままですと、受け取る側の人間が本当はまだ財産を渡してしまうには頼りない場合でも渡した人のものになってしまうので、渡すことをためらっている人もいると思います。「まだまだ子供は頼りないから」というのは子供の年齢に関係なくそう思っている親はたくさんいます。


 そこで親愛信託を活用します。親愛信託では財産権の部分だけを渡せば良いので、名義は自分が持ったまま財産権だけを子供に渡します。そうすると相続税対策が自由にできます。そして、信託にすると設定できる受益者変更権者を使ったり、受益権に条件を付けておけば受益者の意思は関係なく受益者を変えることもできます。


 相続税対策を失敗して、自分の想いとは全く違った形になってしまった例があります。所有権は強い権利なので、当たり前ですが持っている人の自由になり元々持っていた人は何の口出しもできなくなります。それが怖くて財産を動かせないのであれば、信託を活用して名義は自分のまま受益権だけを移すことができ、相続税対策になります。


 親愛信託を活用して、名義と財産権に分けて、自分の好きなタイミングで財産権を贈与したり、譲渡して、それとは別のタイミングで名義を変更し、しっかり管理をしたり認知症対策をしたりすることで将来に備えることが可能になります。しっかり節税をして、将来のもめ事にも備えることができるのが親愛信託です。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1059号 2021年8月1日・16日発行 より 引用)




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