札幌市内の地価高騰など、持ち家志向の子育て世代にとっては厳しい環境が続いている。そうしたことから、ここ数年、札幌近郊の市町にマイホームを求める傾向が続いている。
そこで、石狩市の「緑苑台」と南幌町の「みどり野」という近年注目されている札幌市近郊の2つのタウンの現状と今後についてレポートした。
子育て世帯中心に移住者が増加
札幌市街地から北に車で約30分にある石狩市の緑苑台ニュータウンが、ここに来て存在感を増している。タウン中心部、緑苑台東1~3条街区内を走る延長約600mのシンボルロード両脇では、建設中の戸建があちらこちらで目に付く。
2003年に新居を構えた男性(50)は「更地だった場所に、ここ10年で家が建ってきたが、最近勢いが増している」と驚いている。
全体で1081区画(11月現在)規模の緑苑台は27年に分譲が始まり、三菱地所と住友不動産が開発、販売を手掛けている。
バブル崩壊のあおりで低迷が続いたが、05年にイオン石狩緑苑台ショッピングセンターが開業したことなどを機に、販売を伸ばしていった。
だが、エリア内で多くを占める標準区画が順調に売れる一方で、シンボルロード両脇の大型区画は苦戦していた。三菱地所の担当者は「区画割りが今の時代にあっていないのか、年に1区画売れる程度だった」と振り返る。
状況が一変したのは、緑苑台東3条側にある大型区画を標準よりやや小さい264㎡に区画割りし直してからだ。宅地が高騰する札幌市内で戸建てを諦めた人たちが、石狩に目を向け始めていた。20年11月に17区画を試験的に分譲販売したところ、年内で完売。この好感触を受けてことし6月下旬に35区画を売り出し、ほとんどが成約に至った。
購入者の多くを若いファミリー層が占める。「1坪(3・3㎡)10万円程度で広い土地が取得でき、今では珍しく建築条件が付かない点が注目されたのでは」(三菱地所)と手応えを感じている。
さらに、宅地の売れ行きに呼応する形で、同じ地区内にある業務用区画にも動きが出ている。最近ではペットショップの出店があり、他にも興味を示す企業がいるという。
今後、緑苑台1、2条側の宅地についても同様にサイズを小さくして分譲することを予定。約60区画が予定されていて、東2条側からインフラ整備を施し順次販売する考えだ。バブル崩壊で止まっていた時計の針が再び動き始めている。
子育て支援と土地代支援事業に加え
“コロナ禍”も追い風に
一方、江別市・北広島市・長沼町に隣接する南幌町の「南幌ニュータウンみどり野」(南幌町西町・緑町・東町・美園)は、バブル期後半から北海道住宅供給公社によって分譲を開始したタウン。しかし、バブル崩壊後は、札幌市内の地価の下落、安定とともになかなか分譲が進まない状況が続いていた。
そうした中、同町では2016年度から、子育て世帯への支援(南幌町子育て世代住宅建築助成金)などを開始し、町をあげて「みどり野」の支援を本格化させる。
その結果、16年度に687区画だった残区画が令和2年度に606区画、今年9月末には565区画と確実に販売数を積み上げている。18年には、同タウン内に「みどり野きた住まいるヴィレッジ」という建築家と地域工務店のコラボによる企画エリアを設けるなど話題を呼んだ。
同タウンの好調の1番の要因は、㎡単価1万3400円~という宅地価格の安さに加え、一定の条件の下で「子育て世代住宅建築助成金」により宅地価格が50%になるなど、土地代がほとんどかからないことなどが挙げられる。
また、かつては「JR沿線ではない」ことが同タウンのネックと言われたこともあったが、昨今の“コロナ禍”により、公共交通機関を避けて自家用車で通勤する人が増えていることが同タウンにとってはかえって追い風となっている。
今後については、「24年に高規格道路が開通する。23年春に隣接する北広島市に開業する北海道ボールパークFビレッジまで車で20分程度、空港や札幌市内へのアクセスもよいので、子育て支援に加えてアピールしていく。また23年には子どもたちが安心して安全に遊べる場所づくりである誘客交流拠点が完成するので、さらなる子育て支援の充実によって移住者を増やしていきたい」(南幌町まちづくり課地域振興グループ)と話す。
(本紙第1065号 2021年11月16日 1面より)
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