若手経営者の育成と福祉住宅の環境整備に尽力
土屋公三氏は住宅業界のみならず、北海道経済の発展にも大きく貢献した。若手創業経営者や後継者などを対象に開設した「人間社長塾」もその一つだ。公三氏が塾長となって企業経営に必要な戦略、時には人生観を唱えた。2010年に始まり、約10年間で500人が卒業。業界で話題になるような有名企業、本道経済を牽引する人材を輩出してきた。
講座では、会社と同じように個人や家族も大事だと提唱する「3KM」を伝えた。これは、一人ひとりが目標(Mark)を持ち、それらを自ら管理(Management)し、実現に向けて意欲を引き出すこと(Motivation)を表す3つのMを意味し、これらのイニシャルが、自己管理手法のプログラム内容を示しているのだという。人生育成のために独自で作り上げた人生目標の規範だ。
公三氏は「人間性や人徳が薄れると、会社経営に失敗する。まずは経営者自身が身を修め、次に家庭をしっかりと守り、会社では社員の言うことを聞こう」と訴えてきた。教えを実践した受講者からは社員の退職者が大幅に下がった、会社規模の拡大につながったといった声が挙がっている。
高齢者や障がい者が生涯を通じて安全安心に暮らすための住環境整備と向上にも尽力した。きっかけは家族に障がい者を持ったこと。福祉住宅に興味を持った公三氏は、海外などへの視察旅行を経て、1985年に札幌市南区真駒内に道内初の福祉設備付モデルハウスを建設し注目を集めた。89年にすべての人が共に暮らし共に生きることがノーマル(正常)であるという理念を提唱し、公益財団法人ノーマライゼーションを設立した。
主事業である福祉住宅の建築支援助成金は2022年現在、累計で384件、総額は8302万円に及ぶ。高齢者や障がい者が安心できる部屋づくりや環境整備、道具・用具のアイデアを小中学生から募る「安全・快適アイディアコンテスト」は今年で27回目を迎え、応募総数は14343件となった。広報誌「WITH LIFE~共に生きる」や福祉住宅の建築助成実例集「ふれあい」の配布で、理念の普及啓発にも力を入れている。またコロナ禍以前はほぼ毎年、道内外や海外の福祉施設へ視察旅行に赴き知見を深めていた。
国連は06年の総会で障害者の権利に関する条約を採択し、健常者との垣根をなくす「インクルーシブ社会」という概念を提唱した。公三氏はその20年前から福祉住宅の重要性を唱え、実践的な取り組みで道内外に大きな影響を与えた。
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持続的な成長続ける土屋ホールディングス
土屋会長が築いたホールディングスは、昌三社長の指揮下で、道内住宅メーカー唯一の上場企業として堅調にビジネスを続けている。
直近の2021年10月期決算では売上高310億円と、コロナ禍の逆風を受けた前期より8%増えた。純利益も前期の赤字から4億7700万円の黒字へと回復。足元の22年10月期予想は売り上げで6%増の330億円、純利益は4%増の5億円と増収増益を見通す。
日本全体が人口増と経済成長のさなかにあって戸建て需要が大きく伸びた1970年代、80年代と異なり、近年の住宅関連ニーズは多様化している。目下、グループ内の伸び率ナンバーワンは不動産部門だ。仕入れ、仲介ともに好調で、直近10年で売り上げは約4倍、営業利益は5倍に拡大した。マーケットの変化に対応し、持続的な成長を追求している。
(第1079号 2022年8月1日・16日合併号 2面より)
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