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テナントビル管理をDX化 FLINTZ 高森拓也社長

図面上にピンで設備点検情報


 ビル管理のテックサービスなどを手掛けるFLINTZ(札幌)は5月、ビルの点検や修繕データを一元管理するクラウドサービス「ビルカン」を本格リリースした。


 9月末時点で全国のテナントビルなど100棟超に導入。24年度中には全国で3000社との取り引きを目指す。高森拓也社長(38)に話を聞いた。



―商品の特徴は。

 アップロードした図面上にピンを置き、設備の位置を可視化。ピンをクリックすると設備情報のほか、点検や修繕の記録などを登録できる仕組み。写真や報告書をひも付けすれば、設備台帳として活用できる。


―分かりやすいツールと好評だ。

 試用期間に顧客から「図面で何かできないか」と言われたのがきっかけとなり、開発を進めた。不動産を図面でクラウド管理するシステムは国内初。

 たとえば複数台エアコンがある部屋なら、それぞれの管理履歴が簡単に分かる。7月には特許も取得し、どこにも真似できないツールと自負している。


―開発の経緯は。

 家業のビル管理会社で役員を務めた際、属人性が高く紙ベースで設備管理をするビルがほとんどで、非効率と感じた。似たような課題を抱える他社も多かったため、現場から管理職、パート職員に至るまで簡単に使えるツールを立ち上げたいと構想。

 開発には約1年半を要した。現在もブラッシュアップを続けている。


―これまでの紙情報をすべて記録するのか。

 ビルの維持管理を記した帳簿書類は5年間保存が義務。そのため今は2パターンを提案している。5年分の設備台帳を入力してから運用するか、導入後から記録を積み上げるかのどちらか。最大5年でDX移行が完了する算段だ。


―不動産業界でもデジタルツールが急増している。

 道内ではまだITに関心の薄い会社も多く、特に管理業界は後れを取っている印象がある。ただ今後、DX化を進める会社は確実に増えるだろう。むしろ高齢化や人手不足で悩む地方の方が、テック化で享受できるメリットは大きいと考える。


―現在の導入状況は。

 すすきののテナントビルなど札幌圏を中心に、首都圏や名古屋、大阪など全国で100棟超を達成した。主要ターゲットとする小規模ビルはオフィスビルの約10倍あるといわれており、商圏は大きい。特に複数棟を管理する会社では情報共有するのに便利。マーケットはさらに拡大できる。


―狙う市場は。

 中小規模ビルだけでなく、最近は大手デベロッパーへの提案も始めた。オフィスビルでもニーズがあると考える。ほか、チェーン展開するホテルならエリアマネージャーが現場に行かなくても各地の状況把握ができる。他店舗展開するスーパーや、ドラッグストアなどロードサイド店舗を抱える首都圏の小売業からも問い合わせがあった。いずれも施設管理に課題感を抱えている業種だ。


―今後の展開は。

 全国各地で再開発が進んでいるが、高経年のテナントビルを今後も維持したいというニーズは確実にある。そのためには質の高い管理システムが必要だ。「ビルカン」を入れることで物件の価値向上につながるというセオリーをつくっていきたい。



高森 拓也(たかもり たくや)

1984年生まれ、札幌市出身。2015年、小樽商科大学大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻(MBA)修了。大手広告代理店を経て、2013年、ビル管理を手掛ける秀高(株)の常務取締役就任。21年、(株)FLINTZ創立。


(第1102号/2023年10月1日発行 3面より)


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