ポイント
強化される省エネ基準の義務化
新築住宅への太陽光発電設備導入
国交省と経産省、環境省の3省が2021年8月に公表した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」のロードマップによると、政府が目標とする2050年にカーボンニュートラル実現を目指すためには、新築される住宅・建築物はZEH・ZEB基準水準の省エネ性能が確保された上で、新築住宅の6割に太陽光発電設備が導入されていることが目安となる。
省エネ基準はそもそも「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)によって1980(昭和55)年に制定。
その後、1992(平成11)年、2013(平成25)年に改正強化されてきた。さらに省エネ法に代わって「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)が2015年に公布、温室効果ガス削減などの目標を定めた国際的枠組み・パリ協定を受けて、2018年には同法が改正され2019年と2021年の2段階で改正法が施行されている。
この中で新築住宅への省エネ基準への適応は現行の省エネ基準計算の難しさや全国的にみたときに工務店の技術が追いついてないといった状況を背景に、300㎡未満の住宅については建築士が施主に省エネ基準の適否などを説明する「説明義務」にとどまってきた経緯がある。
2021年12月に入って国交省が合同で開催した社会資本整備審議会の建築環境部会と建築基準制度部会では、今後の住宅・建築物の省エネルギー対策と建築基準制度のあり方について報告案が示され、その中で省エネ性能の向上について2025年以降に新築されるすべての建築物に省エネ基準への適合を義務付ける考えが説明された。
義務化された場合、現在、300㎡未満の小規模建築物に適用されている説明義務制度は廃止される。
課題は太陽光発電など「創エネ設備の導入」
各種太陽光設置サービスは 施主のメリットを優先し選択
前述したように「2050年にカーボンニュートラル実現」の目標を達成するためには、逆算すると2025年までには新築住宅に省エネ基準の適合化を義務付けた上で太陽光発電設備を積極的に導入する必要がある。
このうち、省エネ性能確保については、現在、道内で一戸建て住宅を供給している事業者は経験・実績、技術力で問題のない全国トップレベルにある。問題は「1次エネルギーの消費量をプラスマイナスゼロにできる住宅」と定義されているZEHにどう対応するかだ。いくら省エネ性能が高い住宅を建てて1次エネルギーの消費量を減らしても、それだけで消費量ゼロにはできない。消費量プラスマイナスゼロにするためには、なんらかの形でエネルギーを作り出す“創エネ設備”の導入が必要になる。
住宅の創エネ設備で一般的な太陽光発電設備は、搭載する太陽光パネルの枚数にもよるが、設置するとなると数百万円の費用が嵩む。ここ数年でリース方式や無料で設置する第三者所有サービス(いわゆる「屋根貸し」)、ハウスメーカー独自のサービスなどが提供されるようになったが、注目されるのは無料で設置する第三者所有サービスだろう。
2019年から北海道でもサービス提供を始めた㈱シェアリングエネルギーの太陽光発電システムの第三者所有サービス『シェアでんき』は3年間で道内500棟超えを記録し地場工務店での活用が進むほか、㈱日本ハウスホールディングスと業務提携するなど実績を上げている。
最近は『シェアでんき』に似通った新規参入サービスも現れた。内容を精査すると『シェアでんき』と他の類似サービスでは細かな違いもある。
「指定屋根材・工事」を条件に「太陽光パネルからの配線工事とパワーコンディショナー・遠隔監視装置の取り付け、分電盤までの工事」は工務店側が負担して行う『シェアでんき』のサービスは一見すると工務店側の負担が大きいようにも感じるが、太陽光パネルを載せる屋根からの雨漏りなどのリスク回避という面での安全性が高く、消費者の安心を担保して、施主の信頼を得られることで、後々の施主とのトラブルや問題発生による工務店の評判低下などといった事象が発生する可能性は限りなく低い。また、消費者負担も他サービスより軽いのが特徴だ。
太陽光発電無料設置といっても様々なサービスがあるので、目先の工事費の安さばかりに飛びつくことなく、サービス内容を良く検討しメリット・デメリットを把握した上で最終的に住宅の施主にとってメリットが多いかどうかをサービス選択の基準とすべきだろう。
(本紙第1066号 2021年12月1日 2面より 一部加筆)
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