アメリカの住宅ブームなどによる世界的な木材不足や価格高騰、いわゆる「ウッドショック」は、日本はもちろん、北海道にも影響を及ぼしている。
特に輸入木材の使用量が多く、直接的に影響を受ける住宅業界では、外国材から道産木材への転換も模索されている。そこで、北海道における道産木材流通(販売)の現状を探った。
「ウッドショック」の影響で、輸入木材からの代替として道産木材の普及が進んでいる。道産材は需要の急増で品薄が続き、住宅事業者が調達に苦慮するケースも出できた。
このため一部業者は、製材工場増設や乾燥施設導入など設備投資に動き始めている。だが今後、外材価格が落ち着きを取り戻せば、道産材は再び影を潜めてしまう恐れもある。恒久的に利用してもらうため、木材の地産地消に向けた取り組みを求める声は強い。
「外国産不足で道産材の需要が伸びているが、製材工場からの供給は滞っている」-。北海道木材産業協同組合が9月30日に開いたウッドショックに関する情報交換会で、こんな実情が浮かび上がった。
北海道森林組合連合会が取り扱う一般木材による素材(丸太)販売量の実績は、コロナ前の2019年が14万8000㎥だったのに対し、21年は7.4%増の15万9000㎥に上昇。道産丸太の流通拡大がうかがえた。
しかし、道木連がことし8月末に道内製材事業者向けに実施したアンケート(41社回答)だと、素材の販売先である製材業者の構造材製品生産量実績は「平年並み」が半数を占めている。
道産材需要増も一過性を懸念
設備投資に慎重姿勢の製造事業者
素材は流通しているのに建築材料は増えていない。この要因について3割が「原木不足」だと指摘した。ある製材工場は「原料面での不安が大きい。地元工場消費量の数倍の丸太が港から流出している実態に恐怖感がある」と明かす。
このほかの理由について「乾燥施設の限界」が挙がった。需要に応じて設備投資すれば解決できるが、そう話は単純ではない。ある事業者は「木材が高騰する度、道産材に注目が集まるが、大体一過性となる。ウッドショックだからといってうかつに投資できない」と慎重な姿勢をみせる。
足下では、高騰した外材価格が道産材に近づく。だが住宅事業者側への調査では、外材価格が下落した場合、約4割の事業者が「(道産材を)5割以上活用する」と答える一方、同じく約4割の事業者が「外材が下がれば使わない」と回答。判断が分れる。
道産材も値上がりしている。製品価格の調査をみると、販売単価が3割超上がっているという回答が2割以上あった。
そんな中、道産材の供給に向けた新たな動きも出てきた、ハルキ(森町)は、製材工場の新築や集成材工場増強を計画。ニッショウ(赤平)も乾燥機を導入する方針だ。
さらに、10月1日には「公共建築物木材利用促進法」改正法が施行し、中高層建築物に対する木材利用が今後、活発になることが予想される。道内での木造中高層建築による道産材需要増も期待でき、供給体制構築を急ぐ必要が出てきた。
道もウッドショック収束後を見据え、道産材利用を希望するプレカット工場・工務店とのマッチングを図る意向だ。道産建築材の安定供給に向けた体制作りに取り組む。
情報交換会では、道産木材普及についても話題が挙がった。製材事業者側は、「安定利用」、住宅事業者側は「安定供給」をそれぞれ望み、どちらの体制を整えるのが先か意見が割れた。
最近では外材価格が落ち着きつつあるという指摘もあり、国産材が下火になればせっかくの設備投資を生かし切れない。道木連の内田敏博副会長は「SDGs(持続可能な開発目標)の指標に、自らの国や地域の素材をどれだけ使ったのかを示すDMC(ドメスティック・マテリアル・サスペンション)がある。これを普及させて、道産木材を上手に使っていく取り組みが必要だ」と話している。
(本紙第1063号 2021年10月16日 1面より)
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