じょうてつ(本社・札幌)は、約20年ぶりに札幌市内で戸建て住宅の建売販売に乗り出す。駅近の土地60㎡前後の立地に木造、3階建ての狭小住宅を提案。交通利便性の良い立地とリーズナブルな価格帯を売りとする。
試験的に5戸を年度内に供給する予定で、反響があれば本格参入して事業領域を広げる構えだ。
年度内 建売5戸
東区では北24条東14丁目で1戸、北24条東13丁目で2戸、豊平区では美園4条7丁目で2戸をそれぞれ計画する。いずれも地下鉄駅から徒歩10分圏に土地を取得した。自社で設計施工を担当。元町の物件から建設を進めていて、23年2月までに完成する予定だ。
建物は3階建てで、広さは80―100平方㍍、間取りは3―4LDKを基本とする。1階に車庫を設けて駐車スペースを確保。上階にバルコニーを設置する。販売価格は4000万円前後で検討していて、ファミリー層がターゲットだ。
じょうてつは、2000年代前半まで札幌や北広島で建売住宅を年40戸程度販売していた。戸建てよりも手ごろ感のあった分譲マンションの人気が高まったことや、同じ東急グループで札幌にも拠点を持つ東急リバブルとの兼ね合いで、マンション事業に軸足を移した経緯がある。
しかし、好調だった分譲マンションの販売価格が高止まりしていることや、土地不足が深刻化し始め供給が難しくなってきた。
住宅流通研究所によると、札幌市内のマンション平均価格は3000万円台だったが、20年ごろから4000万円を超え始め、今では4260万円(8月時点)と上昇を続ける。さらに低金利などを要因に住宅需要が高まったことで用地取得をめぐる競争が高まり、まとまった土地を見つけるのは困難な状況だ。
新たな収入源を探るため、当時のノウハウを生かして、販売価格を抑えた狭小の戸建て住宅を検討。駅近での土地取得の選択肢が広まり、販売価格も抑えることができると判断し、試験的に事業参入することにした。
土地が高い首都圏と違い、札幌での狭小住宅はなじみが薄い。しかし、最近の分譲マンションの3LDKは70平方㍍が多く、中には60平方㍍の部屋も販売し始めるなど、見慣れた光景になりつつある。
じょうてつの担当者は「狭小であっても街中の戸建てに住みたい層は一定程度いる。首都圏では当たり前のため、札幌がそうなってもおかしくはない」と見通す。22年度は5戸を販売する予定。本格参入となれば、年間30戸を目標に供給する考えだ。
マンションデベロッパーが、戸建て住宅を販売する例は増えている。京阪電鉄不動産(本社・大阪)は、21年に地元不動産業者と共同で建て売りを供給。売れ行きが好調だったため、札幌営業所に戸建事業部を立ち上げた。ことし4月には中央区や東区など8カ所で分譲を開始している。いずれもJRや地下鉄など交通利便性が高い場所だ。
クリーンリバー(本社・札幌)は、豊平区で分譲マンション建設地の余剰分を有効活用して戸建住宅を販売。事業参入については積極的な展開や戸建て用の土地取得などは考えていないとする。
(第1083号 2022年10月16日発行 1面より抜粋)
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