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【不動産】【札幌】 流通・賃貸市場 2023年上半期の総括/後半の展望2

新築市場の状況や 所得水準動向を注視


 リーマン・ショック後、成約の勢いを持続してきた流通市場ではあるが、ことしは半年を過ぎた時点で分野ごとの平均成約価格、成約件数の動きが異なるので、成約・仲介件数増加に向けて市況・ニーズを把握しておくことが重要だ。




 そこで、各分野成約物件の価格や面積の推移を見てみる(グラフ)。過去10年間の変化を平均価格で見てみると、土地の成約物件の平均価格は2012年までは下落または横ばいで推移してきたが、13年は上昇に転じた。14~16年は再び下落傾向にあったが、宅地不足が深刻化する札幌市内で17~21年は急激な上昇を記録。


 札幌市内で用地が不足する中、住宅分野、商業分野などで取得競争が激化し、一部の職種を除き新型コロナウイルス感染症の影響は大きくはなく価格上昇は続いてきた。


 一方、 戸建の平均価格も土地価格と同様、12年に上昇傾向に転じている。これは平均価格を10万円以上引き上げる5~6千万円を超えるような中央区の物件の成約が目に付くほか、地価の上昇も影響している。17年は08年以降最高となる1900万円を突破、18年はついに2000万円を超え過去に例を見ないほど上昇し、19年はほぼ横ばいだったが、20年以降は再び17~18年レベルの上昇に転じ高止まりしている。


 新築住宅価格が上昇する中、若年層、一次取得層が中古住宅取得とそれを活用したリノベーションに流れてきているほか、買取再販業者間での取得競争激化、リフォームなどが施され市場に再投入される再販物件の成約が価格上昇を招く構図が続いている。


 マンションの平均価格は09年で底を打ち、徐々に上昇してきており、特に13~15年の上昇が目立つ。今年についてはまだ上半期のみの平均とはいえ、過去16年間の中で最も高い水準で推移している。専有面積の平均値はほとんど変化していないので、より良い立地の物件を求めるユーザーが多いことに加え、新築市場との兼ね合いによる中古需要の高まりから成約価格が上昇した。


 札幌市のマンション市場は新築の供給物件数が年々絞り込まれ、好立地に限定した物件供給と度重なる消費税率引き上げ、建築コスト上昇によって新築分譲マンションの平均発売価格が4千万円前後の水準まで上がってしまった結果、富裕層やパワーカップル、親からの援助が期待できる若年層以外の一般市民が札幌市内でマンションを住居として希望する場合、現実問題として中古マンション購入しか道がない。


 また、ここ数年は都心部に新築物件が集中供給されてきたことから、「市内のどのエリア住むか」という選択肢が限られてしまっているほか、中古マンションのリノベーションが認知されてきていることも中古物件需要増の背景にある。


 マンションの専有面積、戸建の建物面積の平均は、ここ10年間ほぼ横ばいで推移してきた。土地面積は11年以降大きくなる傾向にあったが、それ以降は横ばいまたは小さくなる傾向を示している。


 いずれにしても、仲介物件を集めたり、販促活動を行う際には、札幌の需要層の所得水準や新築市場の動向などを考慮しながら、売れ筋の価格帯や面積を念頭に置いた効率的な活動が必要だろう。



熟年・高齢向けの単身物件は供給不足


 賃貸住宅市場の動向を探るために流通物件の成約状況をみると、全般的に実需タイプの物件の契約の多さが目立つ傾向に変化はない。特にマンション分野で如実に現れているが、いわゆる「投資型」といわれる間取りや専有面積が小さい物件の需要減少だ。


 この背景には、札幌市の単身層の実態がある。2020年の国勢調査で、札幌市の単身層の世代別の内訳をみると、30歳未満が19・2%、30歳代が12・5%、40歳代が13%、50歳代が13・5%、60歳以上は34・7%。60歳以上は人口にすると14万人を大きく超える。42万人超の単身層がいる札幌市でも、その多くはワンルームの賃貸マンションでは満足できない年齢分布となっている。このため、バブル期に加え、再燃バブル期にも盛んに供給された若年単身世帯向けのワンルーム物件が大量に空室化しているのが現状だ。


 また、2人以上の世帯にしても、世帯主が30歳未満は4%にも満たず、世帯主が65歳以上は約3分の1以上を占め熟年・高齢化が急速に進んでいる。


 増加し続ける熟年・高齢の単身・2人以上世帯がマイホームを選択するとは限らないのが現在の風潮で、民営借家も選択肢に入っているのが最近の傾向だが、空室が増加しているにもかかわらず、こうした熟年・高齢層向けの賃貸住宅の供給はなかなか進んでいない。


 したがって、今後の賃貸経営では、熟年・高齢層のニーズに目を向ける必要がある。また、住宅ローン環境の変化や所得がなかなか伸び悩む現状で持家を購入できない子育て層の需要も睨みながら、供給戦略を見直すことも重要だ。さらに大雑把なエリアではなく、立地場所を“点”でとらえ、どういった層が多く居住する地域なのかといった分析も行いながら供給計画を立てることが求められる。さらに、こうした変化するニーズを視野に入れるとともに、「新型コロナウイルス禍」による市民の生活習慣の変化も踏まえて、立地や設備、間取り、リフォーム内容を判断し、費用対効果も考慮しながら家賃や稼働率を綿密に算定することも求められる。


 札幌市では、毎年、民間借家居住者が4千世帯以上増えているともいわれている。ただ、その年齢分布や世帯内容は時代によって変化し、今後の働き方、生活習慣の変化も予想されるので、稼働率を高めるためには、情報収集して現状を把握・分析し、世の中の動きに遅れないように有効な手立てを打っていくことが不可欠だ。




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