「地材地消」次世代にバトン
道南・森町に本社を構えるハルキは、製材、プレカット加工、集成材製造の3事業を展開する道内唯一の会社。「道産材100%」を目標に掲げ、同社から半径100㎞圏の原木を活用する。主力とする住宅用プレカットの生産は年間1000棟に上り、その大半に道産材を使う。
輸入材の調達が難しくなったり、価格が高騰したウッドショック以降、国産材や道産材に注目が集まるが、「地材地消」に取り組む同社に各方面から熱い視線が寄せられる。春木真一社長(45)に地場材活用への思いと今後の戦略を聞いた。
供給責任果たす
―今回のウッドショックをどう捉えている。
例えばプレカット工場だと、生産に必要な材料が調達できず、工場の稼動に制限をかける事態になるが、地元の材料を使うと、そうならないことがはっきりと分かった。
輸入材に頼っていると、価格が高騰することもあるし、それを受け入れざるを得えない状況にもなる。納期も同様で、コロナの影響でコンテナが入ってこないこともある。道内産の原木を使うと、もっと言うと地場材を使うとそういうことがない。
おかげさまでこの状況にあってもお客様への供給責任を果たすことができた。
―地場材を使うきっかけは。
道産のトドマツはホワイトウッドと見た目は変らないし、加工さえしっかりしていたら良い製品はできるだろうと確信。輸入材に頼らなくてもやっていけるのではないか、地場材でいけるのではないかと判断した。
地元ではトドマツだけでなく、スギが生産されるし、蓄積量が渡島管内で最も多いカラマツもある。この3樹種を使えるのが強み。2013、14年ごろから輸入原木から地場材へのシフトを始めた。今も輸入材を使った製品を一部で買っているが、輸入材の製材は一切行っていない。受け入れる原木は地場材のみ。
―生産・出荷している製品に使う3樹種の割合は。
トドマツが圧倒的に多くて7割ぐらい。次にスギで、カラマツは5%未満。ただ、トドマツとスギの比率にこだわりはない。半々であってもいいし、スギが逆転してもいいと思っている。この地域で生産される資源量に合わせて柔軟にやっていきたい。
スギ壁材輸出も
―スギを使った内外装パネルも販売している。
当社はプレカットを柱とするが、住宅着工が減少する中、それを補う製品として「道南杉ハル壁」を商品化した。ニセコエリアのペンションやコンドミニアムで使ってもらい、評価をいだだき、今では全国に広がっている。トライアルの段階だが台湾にも輸出している。
―地場材の活用にもつながる「地材地消」を会社の方針として掲げている。
木を植えて、育てて、切るまでには約50年かかる。木材業界とはそういう仕事。こう植えて、こう育てると節の少ない良い材になるとか、そんな話もするが、木材が製品になる頃にはわれわれはいない。つまり目先の利益を追っても追えないのがこの業界であり、いかに次につなげていくかが大切になる。
要はバトンをうまく渡していけるかどうか。子どもや孫など次世代を担う人のために、ずっと働ける環境を残すのがわれわれの使命ではないのかと、最近ますます強く感じている。お金が地域の中でうまく循環できる状況をつくらないと地域は活性化しないし、生き残っていけない。
―道が展開する「木育」プロジェクトにも積極的に参画しているが、その先には「バトン渡し」の狙いがあるのか。
子どもたちに木の良さを知ってもらいたい。そんな思いから関わらせてもらっている。住宅展示場や公園などを会場に子どもたちが木に触れ、学び合えるイベントを毎年開催。将来、林業や林産業などで働いてもらえるような仕組みができればいいとも考えている。木を育てるのと同様、時間をかけた長い取り組みになる。
3事業を本社で
―工場・設備の増強と環境対策にも力を入れている。
ことしの春、第4製材工場を本格稼働させ、新たな社屋も10月末に完成する予定だ。4年後には八雲にある集成材工場の本社敷地への移設を考えている。これが実現すれば、製材、プレカット、集成材の3事業を同一敷地内で行う全国初の会社となる。
その後になるが、製品の加工時に出る端材などを使って電気を自給自足できる木質バイオマスボイラーを2030年までに造り、総合木材企業としての形を完結させたい。
―最後にハルキの強みを聞きたい。
プレカットだけでなく、建築に付随するものを全て自社で生産できるところ。これは3事業をやっている強みでもある。「木のことは、ハルキに聞けば大丈夫」。そんな会社になれるようここままでやってきたが、これからもそれを貫き、皆さんのニーズに応えていきたい。
はるき・しんいち 1977年2月生まれ。函館高専を4年で中退した後、札幌の専門学校に通い、CADオペレーターの資格を取得。98年に春木製材所(現在のハルキ)に入社。2019年5月に社長に就任した。
(1080号 2022年9月1日号 4面より)
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