顧客生涯価値の創造で暮らしを支える
地域密着宣言で100年企業へ
創業51年を迎えたことし1月、現グループ代表の岡林敏一氏に替わって札幌宅商(株)の代表取締役社長に就任した船越弥一郎氏。これからの50年に向け「不易流行」を貫き続けるという同社の現状と今後について話を聞いた。
――就任おめでとうございます。
船越 昨年50周年を迎え、持ち株会社のグループ3社体制に移行しました。創業者の想いを継いだ現代表からの承継を大きな仕事と位置づけ、100年企業に向けた新たな挑戦をしていきたいと考えています。
――第4次5カ年計画も前倒しで達成しました。
船越 第4次5カ年計画の3年目にあたる本年度で、グループ目標の売上13億5000万円を達成いたしました。拡大成長路線は今後も継続していきます。
短期的な目標として、まず札幌市内に2店の新店舗出店を計画しています。また後継者の育成にも力を注いでいく所存です。事業会社の次期社長を担えるような若手を育成し、5~7年後には継承して新陳代謝を図りたいと思います。
――中長期的ビジョンは。
船越 就任の際、経営理念として「地域密着宣言!!~始まりの予感~」を掲げました。本店の平岸地区をはじめとした各店舗エリア内でのシェア向上や、街のコンシェルジュとして地域住民のお役に立てるような不動産会社でありたいと考えています。
――具体的には。
船越 昨年SDGs宣言をしましたが、その前から我々は各地域の町内会に参画し、夏祭り参加や清掃活動などの地域貢献に取り組んでいます。
交流の中で、たとえば相続や空き家問題などの不動産にまつわる困りごとを気軽に持ちかけてもらえるような存在になりたいと願っています。
また、我々の原点は弊社の軸でもある仲介事業です。金額よりは件数獲得へのこだわりが強く、大手が避けるような単価の低い物件も地域のコンシェルジュとしてフォローします。
ひとの暮らしにおける顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)の創造を、札幌宅商リビングデザイン(株)や札幌宅商グループ本部(株)といった事業会社の連携を通じ、不動産に関わることならすべてワンストップサービスで提供できると引き続きアピールしていきます。賃貸か売買かで悩まれているお客様に対して、生活に寄り添った物件提案をすることで「今後も札幌宅商に頼みたい」と言っていただけるような会社を目指し続けます。
――不動産DXに関しては。
船越 昨年から売買・賃貸共にオンライン対応とIT重説を導入していますが、特に賃貸借では遠方からのお客様に好評です。完全非対面での契約は現在1割程度ですが、お問い合わせは確実に増加しています。
ただ札幌宅商はこれまで対面コミュニケーションを大切にしてきた会社です。対面と非対面をうまく組み合わせ、お客様にとって価値ある住宅を提供していきたいと考えています。
――市況については。
船越 新築マンションの再開発や用地不足による土地高騰と需要高で中古マンションの価格高騰が進み、ともすれば新築未満中古以上の価格帯になっています。
またコロナ禍による住宅需要の変化で、30~40代の主要購買層が新築企画住宅や手ごろな価格帯である札幌市周辺地域の割安な戸建住宅を選択したのは大きな市況変化でした。税制改正に関しても新築建売が優遇されており、既存流通には少なからず影響があると思われます。
今後は価値観の変化による戸建て志向が膨らむ一方で、アフターコロナや2030年の新幹線延伸・オリンピック誘致を見据えた都心回帰傾向も強まると考えています。
賃貸に関しては二極化が進むと推測します。これまでの築浅・賃料の低廉化ニーズと、たとえば楽器可やペット中心の暮らしをかなえる物件などニッチな賃貸に人気が集まるのではないでしょうか。多様なニーズに対応していくことが適正な賃料と稼働率につながると考えます。
――札幌宅商の「これからの50年」をどう作っていくか。
船越 先ほどDXについてご説明しましたが、札幌宅商の理念としては変わらず人財の質的向上を図ることに注力し、対面コミュニケーションを大切にしていきたいと思っています。
総合力の不動産会社としてモノを売るのではなく、人・自分を売り、心配り・気配りを大切にし、地域貢献もこれまで以上に強化する所存です。市況は大きく変化していますが、信念をぶらさずにきたことがこれまで生き残ってこられた理由だと考えています。
仕入れが厳しく媒介契約が高騰している現状では、特に地域から上がってくる話ひとつずつが貴重です。そういったことを受容できる人財育成とサービス品質の向上を続けていきます。若輩者ではございますがご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
――ありがとうございました。
船越弥一郎(ふなこし やいちろう)
昭和51年生。賃貸仲介会社を経て平成24年札幌宅商入社。平成28年本店店長および執行役員次長、平成29年執行役員部長、令和2年取締役部長。同年より常務取締役。同4年1月より現職。
第1070号 2022年3月16日号 5面より
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