北海道に特化した不動産投資信託(北海道リート)の誕生に向け、建設や不動産などの道内企業を中心としたスポンサー20社が、資産運用を担う北海道アセットマネジメント(本社・札幌)を7月に設立した。主に機関投資家向けの私募リートとして展開する。
2023年春に予定するリート運用開始から3年で資産規模300億円を目指す。北海道リートの立ち上げに関わり、出資者をまとめた浜野恭義社長に運営の方向性などを聞いた。
―北海道リート誕生に至った経緯を。
三菱UFJ銀行札幌支社長(現在は支店長)に着任して間もない18年5月に、地域リートについて勉強会をする機会を得た。当時はインバウンドに対応したホテル開発やIR誘致、北海道新幹線札幌延伸に向けた設備投資など大きな波があった。
勉強会や道内各地を巡り地元企業との触れ合いを通じて、思っていた以上に北海道はダイナミックに動く局面にあると感じた。これからのまちづくりや経済活性化、社会課題の解決にリート構想を結び付け、実現したいというスイッチが入った。
3年かけて幅広い業種の企業、行政の人たちにリートの理念を語り掛けた。CRE(不動産事業)や経営戦略の中にリートを位置づけてくれれば互いの成長にプラスとなる。趣旨に理解は示してくれても「簡単にはいかない」という意見がほとんどだったが、100社近くに声を掛け、地元の19社が賛同し、昨年10月18日に設立協議会を発足することができた。リートが成長するためにも、メンバーはさまざまな業種が関われるように意識している。特定のデベロッパーを中心に声を掛けてやろうということは当初からしていない。これが、ほかのリートとの違いだ。
23年1月に北海道リート投資法人が設立する予定だ。資産規模は、経営としての安定感を出すためにも23年春の運用開始後3年で300億円まで持っていきたい。これに到達すれば、ある程度は機関収益で経営をまかなうことができるだろう。
―利回りについてはどのように考えているのか。
状況によって変わるかもしれないが、4%を安定的に返すような形を目指したい。リートは投資家があっての世界。安定した利回りをつくることが重要で、我々の力量が問われることになる。魅力ある物件は競争が激しく、何でもかんでも買ってしまえばリートの価値は下がる。次世代の街づくりに貢献するような物件で利回りを作っていくことが大切だと思っている。
―地域特化型リートとする理由は。
例えば、福岡リートは地元を代表する大手デベロッパーの福岡地所が主導している。人も物件も多くがここから出ている。北海道リート構想を考えた時、福岡地所のような会社は道内には存在しない。そうした企業を中心に据えて立ち上げるのではなく、幅広く出資者を募る協同型リートの方が北海道の地域特性に合っていると思った。国内のリートは特定のメインスポンサーを持つ場合がほとんどなので、北海道リートは新しいチャレンジとなる。すでに、道内外の企業から問い合わせや面談の依頼があった。関心は高いと感じている。
―リートに入れる物件の考え方は。
札幌都心部の古いビルは、資金面を理由に建て替えを断念する地元オーナーが多く、道外のファンドやデベロッパーに売却するケースが後を絶たない。北海道リートが開発をサポートすれば、道内で資金を循環させることができる。
北海道リート投資法人が主体となって開発はできないが、コンサルティングという立場でビルオーナーにアプローチする。例えば、ビルを建て替えた場合、所有権の半分をリートに売却してもらい、残り半分は自分たちの持ち分にするということができる。
札幌だけでなく地方にも目を向けたい。地元企業の重要なCREに位置づけられる物件で、北海道リートが支援して成長するのであれば、積極的にアプローチしたい。北海道の成長戦略として見れば、観光やエネルギーにも興味を持っている。
組織の中にまちづくりのコンサルティングを担う企画開発委員会を置いた。協同型リートなので民間だけでなく行政との関わり合いを持たせていけると考えている。道内各地のまちづくりを官民連携で進めていければいい。北海道リートが地域のプラットフォームとして認知され、地元企業の経営戦略にしっかりと位置づけてもらえる存在になりたい。
浜野恭義(はまの たかよし) 1968年3月生まれ、静岡県出身。91年3月に専修大卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。札幌支店長、コーポレート情報営業部上席調査役を歴任し、2022年3月に退職。北海道リート設立準備室長を経て同7月から現職。
(第1080号 2022年9月1日号 より 先行配信)
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