企業同士をプラットフォームでつなぐ
異業種間の情報連携基盤を提供する「一般社団法人 企業間情報連携推進コンソーシアム(以下NEXCHAIN)」は、21年1月から、賃貸物件の入居契約時に必要な各種申し込み手続きをワンストップでできるサービスをはじめた。
現在は不動産売買取引をひとつのプラットフォーム内で実現する構想や、相続対策と合わせて個人資産を一元管理するサービスを計画中だ。
企業同士の議論の場とデータ連携インフラの提供で企業同士を結びつけて生まれたサービスが、ユーザーの購買行動を大きく変えている。
フラットで透明性の高い組織を目指し、2020年に設立したNEXCHAINの会員企業は現在38社。生保会社、インフラ関連、法律関係、テックサービスなどジャンルは多岐に渡る。
コミュニティをつくってアイデアをブレストする議論の場と、安心安全かつ使い勝手の良いデータ連携の基盤を提供。
同法人の取組は経団連がDX実装プロジェクトとして認定。日本クラウド産業協会の第16回「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2022」ではIaaS・PaaS部門の審査委員会賞を受賞した。
ワンストップサービスで賃貸入居を支援
「賃貸入居プロセスのワンストップ化サービス」は賃貸管理事業者やインフラ関連サービスなど8事業者19商材と連携。入居申し込みの際、不動産業者に提出する契約書を仮申込書として、電気やガスなど受けたいサービスを選択すると、各インフラ業者からSMSや電話で確認の連絡が来る仕組みだ。
10月時点での利用者数は約5万8千人超。現在参加する管理会社は大手のみだが、管理戸数の少ない業者は料金体系を変えるなど、できるだけ多くの会社が参加しやすい施策を検討中だ。同法人の田原事務局長によると、道内や東北などの寒冷地では、空室期間中に給湯設備に通電させる必要があるため普及率は低いが、課題をクリアし件数拡大を目指すとしている。
不動産売買取引のプラットフォーム構想
「不動産売買取引プラットフォーム構想」は、ことし9月から同法人での検討を開始した。不動産売買取引(以下、同取引)に関わる、売主、買主、仲介事業者、銀行、司法書士などのステークホルダ同士が企業をまたいでデータ連携し、同取引における一連の手続きを安全安心かつ効率的に進められる仕組みだ。(図2)
同取引における複雑な手続きや工数の多さを解消し、かかわる全てのステークホルダが安心して手続きを進められる仕組みの構築を目指す。同法人の清水氏によると、まずは中古物件の売買取引を想定し、各社との検討を推進中。いずれは地方自治体や関連省庁等の行政連携に加え、不動産業界全体の課題解決を目指したいと話す。
アセット管理で個人情報配慮も
相続/資産管理サービスは、普段の資産管理から万が一に備えた相続対策までサポートするサービスだ。利用者は相続/資産サービスに資産情報を登録。登録した資産情報は暗号化され、強固なセキュリティ下で管理される。死後は生前に登録していた資産情報が相続人に送られる。
また、生前に利用していたサービス(SNSアカウント等)で死後の解約手続きに不安があるものについては、司法書士によって削除される。家族に負担をかけることなく、生前から相続対策を行うことができる点が、相続/資産管理サービスの特長だ。
現在は保険会社、ITベンダー、司法書士法人など5社が連携し、数年後の商用化に向け検証、検討を重ねており、同法人の原園氏は「将来的には、相続に関連性の深い銀行や保険会社などを中心に参加企業を増やしたい」とした。
田原事務局長は、今後は現行ユースケースの拡大に向けて金融系企業の参加促進に力を入れるとする一方で、「食品系企業や環境関連など、衣食住のすべてに関わるのが目標。さまざまな業種との連携に貢献したい」と意欲を見せた。
(1086号 2022年12月1・16日合併号 10面より)
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